クリーンルームとは?

工場などの製造現場で導入されるクリーンルームは、近年では新型コロナウイルス対策としても効果を発揮しています。そんな注目が集まるクリーンルームとはどういうものか、見てみましょう。

目次

クリーンルームって何?

クリーンルームとは、温度や湿度を快適な状態にして、外からのゴミ(浮遊物)が侵入しないように室圧を制御した部屋のことです。

クリーンルームのメリット

クリーンルームを導入する一番の目的は、異物(ほこり・虫等)の混入を減らして不良率を軽減し、品質をグーンと高めることなんです。つまり、不良を減らして歩留まり率をアップさせることなるから生産性も利益率も上がりますよね!さらに、取引先からも品質管理がしっかりしていると評価されて、新しいお取引をゲットするチャンスも増える可能性がありますね。

それだけじゃないんです。副次的な効果として、クリーンルーム化すると作業場がキレイにエリア分けされるから、他の作業との接触も減って怪我やヒヤリハットのリスクも減らせます。安全対策にもなるんですよね。

それに、もっと最近ではクリーンルームが新型コロナウイルス対策としても有効って注目されてます。感染対策にもなるんだから、ますます重要ですよね。

クリーンルームの定義

クリーンルームは、「空気中の浮遊微小粒子や微生物を徹底的に管理し、作業空間内には不純物やゴミを取り込ませない特別な空間」なんです。

たとえば、半導体の製造や食品加工など、製品の製造過程で微小なホコリやゴミが絶対に許されない場所や、品質に影響を及ぼす可能性がある場所でクリーンルームが活躍しています。そこでは、作業空間内のホコリやゴミを清浄度(クラス)という厳しい基準で管理しているんですよ。

クリーンルームは、非常に高度な技術と知識が必要ですが、品質を確保し安全な製品を提供するために欠かせない存在なんです。製品を作る際、品質を重視している取引先からもクリーンルームの設置を求められることもあるんですよね。

クリーンルームの基準・清浄度(クラス)

空気のクリーンさを示す「清浄度(クラス)」は、単位体積に含まれる粒子の数で表現されるんですよ。クリーンルームにおける空気のクリーンさを示す基準は、国際的に統一されたISO規格が使われているんです。ISO規格では、1立方メートル当たりの空気中に0.1μm以上の粒子の数が基準とされており、9つのクラスに分けられています。

それ以前にも広く使われていた米国連邦規格では、1立方フィート(約30cm四方の箱)の空気中に含まれる0.5μm以上の粒子の数が基準で、6つのクラスに分けられていました。

これらのクラス分けは、空気のキレイさを評価する上でとても重要な指標なんですよ。それぞれのクラス分けはこんな感じです。

一般的な工場や検査工程のクリーンルームとして求められるクラスは、米国連邦規格の10,000クラスですね。

クリーンルームの用途・種類

クリーンルームには、インダストリアルクリーンルーム(ICR)とバイオロジカルクリーンルーム(BCR)の2つのタイプがありますが、どちらも高性能エアフィルターを使って部屋の空気をきれいにするという点では同じですね。

工業用:インダストリアルクリーンルーム(ICR)

インダストリアルクリーンルーム(ICR)は、工業用途に特化したクリーンルームです。ICRは空気のクリーンさ(浮遊塵埃の数)によって評価され、高性能フィルターによって空気中の微粒子を除去し、クリーンな環境を保っています。主に半導体製造、液晶製造、電子部品機器、印刷、プリント基板、レンズ、光学機器、フィルム、精密機器、そして宇宙開発研究などで使用されています。

食品医薬品用:バイオロジカルクリーンルーム(BCR)

バイオロジカルクリーンルーム(BCR)は、食品や医薬品の製造などに特化したクリーンルームです。BCRでは、空気のクリーンさだけでなく、微生物学的なクリーンさも要求されます。具体的には、空気中や床などに浮遊している微生物の数を限定する管理が行われます。主な使用分野は食品・製薬産業の汚染防止対策や、無菌治療室や手術室などの医療分野、バイオテクノロジー研究、遺伝子工学などがありますね。これらの場所では、微生物の浮遊を限定したレベルの数値以下に管理しています。

クリーンルームの仕組み

クリーンルームは、壁・天井・床などが特殊なパーティションで構成されていて、まずは密閉することで外部からの微粒子や微生物の侵入を防いでいるんですね。

また、クリーンルームでは、HEPAフィルター(超高性能フィルター)を通過した清浄な空気を室内に循環させています。清浄な空気は循環ファンによって室内に拡散され、その後空調機によって吸い込まれ、再びフィルターを通過して清浄化された空気が室内に戻っていくんです。だから、クリーンルーム内の空気が常に清潔な状態が保たれるんですね。 このクリーンルームでは、HEPAフィルターが重要な役割を果たしています。このフィルターは、0.3μm以上の大きさの微小な粒子や微生物を99.99%の捕集効率で取り除きます。凄いですよね!だから、空気中のゴミや微粒子を効率的に除去して、クリーンルーム内の清浄な環境を維持できるのですね。

クリーンルームが陽圧に保たれることで、外部からの汚染物質を徹底的にシャットアウトする効果が生まれます。陽圧状態とは、クリーンルームの室内の気圧が外部の気圧よりも高い状態を指します。

外部からの汚染物質は、一般的には低い気圧の方向に向かって流れる傾向があります。ですので、クリーンルームが外部よりも高い気圧を保つことで、外部からの空気が室内に流入することを防ぎます。その結果、外部の汚染物質や微粒子がクリーンルーム内に侵入することが大幅に減少します。

この高い気圧を維持するために、外部から取り込んだ新鮮な空気を、特別なフィルターであるHEPAフィルターを通して空調機本体に導入し、既存の空気と混合します。その後、同じ量の空気を排出して、クリーンルーム内の高い気圧を維持させるのです。陽圧が保たれ、ろ過されたクリーンな空気が室内に拡散し、部屋内の空気が常に清浄な状態に保たれるのです。

クリーンルーム導入後の管理はどうすれば良いの?

クリーンルームの四原則

管理や点検はどうやってするの?

クリーンルームの管理や点検は、定期的で計画的なアプローチが重要です。以下に、クリーンルームの管理と点検におすすめの方法をいくつか紹介します。

基本的な清掃とメンテナンス

定期的な清掃とメンテナンスは、クリーンルームの適切な機能と清浄度を維持するために欠かせません。床や壁面、天井、フィルター、作業台などの頻繁に触れる箇所は、汚れや微粒子が付着しやすいため、適切な清掃が必要です。

フィルターの交換

HEPAフィルターやULPAフィルターはクリーンルーム内の空気をろ過し、清浄な状態を維持します。フィルターの性能は時間とともに低下しますので、定期的な交換を行い、フィルターの効果を保つことが重要です。

空気清浄度のモニタリング

クリーンルーム内の空気清浄度をモニタリングすることで、クリーンルームが所定のクラスに適合しているか確認します。モニタリングは定期的に行い、必要に応じて調整や対策を行います。

機器の点検

クリーンルーム内の機器や設備は正常に動作しているかを点検し、問題があれば早期に対処します。特に空調機や排気装置、温湿度制御装置などの適切な動作がクリーンルームの清潔度に大きく影響するため、こうした機器の点検は重要です。

トレーニングと教育

クリーンルーム内で作業するスタッフに対して、適切なトレーニングと教育を行います。清掃の方法や適切な着衣の着用、衛生管理の重要性などを徹底的に理解させることが、クリーンルームの管理において欠かせません。

これらの方法を組み合わせて、定期的かつ徹底的な管理・点検を行うことで、クリーンルームの適切な機能と清浄度を確保し、製品の品質や作業環境を高い水準で維持できるようになります。

点検は他の会社に頼めるの?

クリーンルームの点検を専門の業者に委託することは一般的です。クリーンルームの点検や管理は専門知識や技術が必要とされるため、それを持つプロの業者に依頼することで、より信頼性の高い点検が行われます。

業者によるクリーンルームの点検では、定期的な清掃やフィルター交換、空気清浄度のモニタリング、機器の点検など、必要な作業が専門家によって適切に行われます。また、専門の業者はクリーンルームに関する法規制や規格にも精通しており、法令遵守や規格適合にも配慮した点検が行われます。

業者に委託することで、クリーンルームの適切な管理が確保され、生産効率や製品品質の向上に寄与することが期待できます。また、専門業者による点検は、点検結果や改善案を適切に文書化し、報告書として提供することも一般的で、管理記録の整備にも役立ちます。

ただし、業者を選ぶ際には信頼性や実績を確認することが重要です。経験豊富で専門的な知識を持ち、過去にどのようなクリーンルームの点検実績があるかを確認し、信頼性の高い業者を選ぶことが大切です。

クリーンルームの主なメーカー

日本で有名なクリーンルームのメーカーとして、以下の5社があります。

ユニバーサルエンジニアリング(Universal Engineering Co., Ltd.)
シマブン(Shimabun Corporation)
東京エレクトロン(Tokyo Electron Limited)
日東クリーンシステム(Nitto Clean System Corporation)
パシフィック工業(Pacific Industry Co., Ltd.)

クリーンルームを導入するにはどうすれば良いの?

導入するには?

クリーンルームを導入する際には、以下のような手順が一般的に必要とされます。ただし、具体的な手順や要件は導入を希望するクリーンルームの種類や用途、規模によって異なる場合があります。専門家の助言を仰ぐことが重要です。

1.基盤の調査

クリーンルームを導入する予定の建物や場所の状況を調査します。電気設備、通気システム、排水、照明など、クリーンルームを導入する上での制約や改善が必要な点を特定します。

必要なクリーンルーム仕様の検討

用途に応じてクリーンルームの規模、清浄度クラス、温湿度管理、空気の流れや循環、機器や装置の配置など、具体的な仕様を検討します。

デザインと計画

クリーンルームの設計図を作成し、必要な設備や装置、フィルターシステム、排気システムなどの計画を立てます。

フィルターや装置の導入

必要なフィルターや装置を導入します。HEPAフィルターなどが適切に設置されていることを確認します。

施工と建設

計画に基づいてクリーンルームの施工と建設を行います。クリーンルームの壁・床・天井などの構造を構築します。

クリーンルーム設備の検証

クリーンルームの完成後、機器や装置が適切に動作するか、クリーンルームの清浄度クラスが要件を満たしているかを検証します。

トレーニングと運用

クリーンルームを運用するスタッフに対して適切なトレーニングを行い、クリーンルームの運用とメンテナンスの手順を確立します。

定期点検とメンテナンス

クリーンルームの定期点検とメンテナンスを実施し、クリーンルームの清浄度や機能を維持します。

これらの手順を順番に進めることで、クリーンルームの導入と運用を円滑に行うことができます。また、クリーンルームの導入には、建築、電気、機械、環境衛生などの専門家が関与することが一般的です。

届出は必要なの?

日本においてクリーンルームを導入する場合、一般的には建築基準法や労働安全衛生法などの法律や規制に基づいて、特定の条件を満たす場合には届出や許可が必要となります。ただし、クリーンルームを導入する規模や用途によって届出の必要性が変わるため、具体的なケースに応じて確認することが重要です。

以下は一般的なケースでの届出の例ですが、導入を検討する際には専門家に相談するか、現地の法律や規制を確認することをおすすめします。

建築基準法に基づく届出

クリーンルームの建築や改築を行う場合、建築基準法に基づいて自治体に対して建築確認申請が必要となることがあります。

労働安全衛生法に基づく届出

クリーンルーム内での労働者の健康と安全を保護するため、労働安全衛生法に基づく届出や遵守事項の届出が必要な場合があります。

環境保護法に基づく届出

クリーンルームから排出される廃棄物や排気ガスの処理について、環境保護法に基づく届出が必要な場合があります。

医薬品製造に関する届出

クリーンルームで医薬品や製剤を製造する場合、厚生労働省への医薬品製造施設の設立届出が必要となることがあります。

なお、クリーンルームの導入にあたっては、専門家や関連業界の組織と相談することで、適切な届出手続きや規制遵守を行うことができます。

相談してから実現するまでどれくらい掛かるの?

クリーンルームを導入する場合の期間は、導入するクリーンルームの規模や用途、建設場所の条件、工事の複雑さなどによって異なります。一般的なクリーンルームの導入期間は、数ヶ月から1年以上に及ぶことがあります。

以下は、クリーンルームを導入する一般的なステップと、それにかかる期間の一般的な目安ですが、実際のケースによって異なることをご理解ください。

設計・計画段階:クリーンルームの用途や要件を明確にし、設計図や計画を立てる段階です。この段階で要件を整理することで後の工程がスムーズに進むため、数週間から数ヶ月がかかる場合があります。

設備の調達・準備:必要な設備や材料を調達し、現地の環境に合わせて準備する段階です。設備の調達には納期がかかることがあり、数ヶ月から半年以上を要することがあります。

建築・工事:実際にクリーンルームを建設・工事する段階です。工事の規模や複雑さによって期間は異なりますが、一般的に数ヶ月から1年以上かかることがあります。

機器の設置・テスト:クリーンルームに必要な機器を設置し、テストを行う段階です。機器の設置とテストにも数週間から数ヶ月がかかることがあります。

運用開始:クリーンルームの準備が整い、運用を開始する段階です。運用開始後もクリーンルームの管理や点検が必要なため、定期的な作業が継続的に行われます。

以上のステップを含めると、クリーンルームを導入する全体の期間は、1年から2年以上に及ぶ場合が多いです。ただし、特定の用途や要件によってはより短い期間での導入も可能な場合があります。計画段階から十分に余裕をもって進めることで、スムーズな導入を目指すことが重要です。

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