空気に色を付ける?
気流解析とは、普段目に見えない空気の流れ、温度や湿度をデジタル技術を用いて可視化する技術です。
局所排気設備は計画通りに空気を排気できるのか?
新しく導入する空調機で作業環境の温度を下げることができるのか?
実際に工事をする前にシミュレーションをすることで、関係者全員が共通認識を持つことができます!
気流解析って何?
そもそも空気って何色だっけ?
普通に生活していると「空気」を意識することって少ないですよね。これは空気が透明で目に見えないからだと私は考えているのですが、もしみなさんが空気に色をつけるとしたらどんな色にしますか?
事務所のエアコンから出ている冷たい風は「青」工場で発熱する設備の周りのもわもわした空気は「赤」森の中を歩いている時に流れるそよ風は「緑」私だったらこんな色のイメージですかね。でも、もしかしたら皆さんは違う色を想像するかもしれません。同じ「青」でも「水色」に近い、とか「赤」というより「オレンジ」だな、とか。さらに空気の流れがどうやって流れているのか?風速2.0m/sって速いの?遅いの?これも人によって感じ方がマチマチですよね。
私がまだ30代の時、働いていた工場で新たに「局所排気」「暑熱対策」「恒温恒湿」など空気に関わる投資計画をしたときの話を少しだけ。
工事が終わった後に「こんなイメージじゃなかった!」という部長の声「ここの空気がよどんでいるんだけど…」という現場の声いろいろな声が聞こえてきたことがよくありました。こちらからやりたいことを設備業者さんに伝えて設計をしてもらい、設備計画図面を作成してもらったのですが、空気の流れまでは計画に反映されておらず、関係するメンバーそれぞれがイメージした「空気・気流」で計画が進んでしまっていたのが原因でした。
えぇ!?
当時はまだ気流解析の技術は一般的ではなかったのですが、もし今同じような案件を担当することになれば、「私の経験を生かして、少しコストをかけてでも事前に気流解析をして可視化しておきましょう。」真っ先にそう提案するつもりです。
気流解析とは、システムの力で空気の温度や流れ、汚れや臭いなどを関係者全員で同じイメージを共有できるように可視化するものです。建物内の空気の流れを事前にシミュレーション上で表現することによって、空調システムの効率性を高めたり、気流の流れについて事前にみんなで共通認識をもつための技術なのです。
気流解析が必要になるケース
工場の局所排気ブースの新鮮空気の取入口の風速は確保されそうか
工場の暑熱対策で本当に狙った場所の風は動くのか
大学の講堂で後ろの席と前の席の温度差はどれくらいになりそうか
体育館に新しく設置する空調機は体育館を冷やすことができるのか
ビルを建設したとき、ビル風はどのように抜けていくのか
最近ではコロナウイルスの拡散状況をシミュレーションした「富岳」の解析結果もよく見かけますよね。対象物の大小にかかわらず、流体が関わるところに気流解析あり!です。
自社で気流解析を行うにはどうしたら良いの?
必要なソフトウェア
主要メーカーは以下の通りです。
アンシス・ジャパン株式会社
オートデスク株式会社
株式会社富士通九州システムズ
株式会社アドバンスドナレッジ研究所
ソリッドワークス ジャパン株式会社
株式会社CAEソリューションズ
ムラタソフトウェア株式会社
COMSOL, Inc.
株式会社ヴァイナス
プロメテック・ソフトウェア株式会社
それぞれのメーカーに特色があるので、まずはどんなことを解析したいのか。
例えば、街の風の流れなのか、建物の中なのか、工場の特定の設備なのか、送風機などの部品検証なのか、自動車の抵抗なのか、、、など
解析目的を明確にしておくことが重要です。
OpenCFD社からはフリーソフトも出ているようですが、ちょっと私のITレベルでは、、、
是非使われている方がいれば感想を教えてもらいたいところです。
必要な知識
まず最初に、解析には限界があることを前提におきましょう。
もちろんスーパーコンピューターを使えば、現実そのままの空間を細部まで再現して、精度の高い結果を得ることができるのですが、私たちが一般的に使うコンピューターでは、現実空間の再現をできるだけ簡素化させることで計算速度を上げたり、コンピューターの計算処理負荷を低減させていくことでコストバランスをとることが一般的です。
次に、建築や空調に関する知識が必要になります。
例えば工場の換気設備を解析する場合、まずは工場の建物を三次元で再現しなくてはいけません。
形状に加えて、その材質が屋外からどれくらい熱を通すのか、窓ガラスはどれくらい、どの方向にあるのか、どのような仕様のガラスか。内部の照明設備からの発熱、空調設備の冷却能力、生産設備の発熱表面温度などの詳細情報を入力して、できる限り現状の状態と同じ状況を再現します。
しかし、一般的にすべての設備の配線1本1本まで再現したり、その発熱を精緻に再現しきることは難しく、ある程度デフォルメした情報での解析を行うことが一般的です。また、刻々と変化する外気温湿度条件もすべての状態を網羅するわけにはいかず、こちらも最大値、平均値などある一定数値を用いることになります。
気流解析の仕方・手順(Ex.工場換気の場合)
1.解析目的の確認
現在の問題点は部屋内が負圧となり、異物が混入するリスクがあること
部屋を陽圧にして異物混入を無くしたい
2.工場の三次元データでの再現(※)
対象の部屋の天井、壁、床、扉、窓、生産設備などを三次元データ化
平面図、立面図などの建築図面や空調設備、生産設備などの図面が必要
3.換気情報の入力
空気の出入りを確認するために現状の「排気」「給気」「空調」の機械仕様、運用状況を確認
メンテナンス不足による能力ダウンが無いかも合わせてチェック
4.発熱情報の入力
必要電気容量、表面温度など熱に関する情報を入力
5.現状再現解析の実施
6.各種情報の修正
現在の温湿度測定データをもとに解析データを調整
実測データに近い状態にチューニング
7.実施工事情報の入力
給気増加のための工事計画情報を入力(風量など)
8.改善後解析の実施
9.改善前後での結果比較
陽圧は改善したものの、給気量増大により夏場に暑い空気、冬場に冷たい空気が入ってきてしまう弊害を確認
外気処理機を追加導入することとする
※三次元データでの再現には、3Dスキャナーを用いるとより再現性を高めることができます。
気流解析をお願いするにはどうすれば良いの?
お医者様にも専門医があるように、解析にもいろいろな種類があります。
まずはこちらのやりたいことを理解してくれる会社が良いでしょう。工場の局所排気を解析したいのに、自動車の空気抵抗を解析する会社に依頼してしまっては、内科に行く予定が外科に行ってしまったようなものです。
また、解析においては専門分野の設計を一緒に実施できる会社であるだけではなく、実際の工事施工、施工後のアフターサービスまで一貫して依頼できる会社にお願いすることをおススメします。設計者と解析者が別の会社である場合、設計の意図が解析者にうまく伝わらなかったり、解析者がデフォルメしたところが実は重要な要素だったり、両者のキャッチボールが多く、検証に時間がかかってしまう恐れがあります。
更に、実際の工事施工のタイミングで設計時の重要な点がうまく伝達されていなかったり、施工後に別の改修工事などがあり前提条件が変わってしまう場合など、アフターサービスにおいても設計時からの考えを理解してプロジェクトを進めてくれる会社のほうが安心です。
気流解析だけを切り取って依頼するのではなく、対象設備以外の工場全体のことを理解し、一貫して寄り添ってもらえるパートナーを見つけていきましょう。
ここ大事!
用意するもの
1.現状と目標の差の把握
現状の温度と目標の温度(全体的か、ポイントか)
吸い込み風速の不足データ
など定量的になにを、どのように改善したいか
2.現状図面(平面図・立面図・設備配置図)
3.生産設備仕様(発熱量・表面温度・送風機能力・空調機能力など)
依頼の手順・スケジュール感
初期ヒアリング(Webミーティング)
用意した資料をもとに初期ヒアリングを実施します。
工場の生産内容、現状と目標の差を共有しましょう。
この時、解析においてどのような条件設定をしていくかの打ち合わせも実施します。
現地調査
初期ヒアリングでの情報と現地での情報を比較して過不足が無いかを確認します。この時、事前に提出した機械の能力が発揮できているか確認しておくことをおススメします。
現状再現解析
工事設計を並行して実施。約1ヶ月ほど掛かります。
工事設計内容を解析に反映
こちらも1ヶ月ほど掛かります。
成果物イメージ
株式会社アドバンスドナレッジ研究所
※掲載許可未確認
気流解析・流体解析の主なソフトウェア
主要メーカー
アンシス・ジャパン株式会社
オートデスク株式会社
株式会社富士通九州システムズ
株式会社アドバンスドナレッジ研究所
ソリッドワークス ジャパン株式会社
株式会社CAEソリューションズ
ムラタソフトウェア株式会社
COMSOL, Inc.
株式会社ヴァイナス
プロメテック・ソフトウェア株式会社